あるポスティング会社は、業務を回すために約150名のスタッフが必要でしたが、在籍していたのは30名ほど。特に、配布の中心となる60歳以上のスタッフ採用に頭を抱えていました。
状況を打破するために取り入れたのが、従来の“本人向け求人”をやめ、家族に向けたアプローチに切り替えるという新戦略。これにより、わずかな期間でスタッフ数は5倍に増加しました。
なぜ従来の求人は成果が出なかったのか?
これまでの求人は、シルバー世代本人に対し、
「空き時間でお小遣い稼ぎ」
「隙間時間を有効活用」
といったお金や時間の使い方を中心に訴求していました。
しかし、本人たちの本音はそこではありません。
彼らの行動の背景には、「子どもや孫に迷惑をかけたくない」という強い思いが存在します。
この思いは、経済面の負担だけでなく、健康や介護への不安にも及びます。
加えて、彼らが仕事に求めているのは、単なる収入ではなく、
- 健康の維持
- 認知症の予防
- 人との交流
- 経済的な自立
という4つの価値でした。
発想の転換:「親」ではなく「子ども世代」に訴求
こうした気づきから、ターゲットを親世代ではなく40~50代の子世代に変更。
親の健康や自立を願う子ども世代が、情報を得て親に仕事をすすめやすいようにメッセージを設計しました。
新しい求人チラシの見出しは、
「60歳以上のお父さん・お母さんがいる方へ。元気で長生きしてほしいなら、この仕事がおすすめです」
本文では次のポイントを明確に伝えました。
- 健康のための適度な運動
- 脳を使うことで認知症予防
- 仲間との交流による社会参加
- 自分で稼ぐことで自立と自信
さらに、
「親が健康で自立していることは、子ども世代の負担軽減にもつながる」
という家族双方のメリットを強調しました。
結果と波及効果
このチラシを配布した結果、
「うちの親にちょうどいい仕事だと思う」という連絡が相次ぎ、応募者数は急増。
最終的には必要人数を大幅に超える採用に成功しました。
同じ手法は他業種にも応用できます。
- 介護施設:生きがいを持って働けるボランティア募集
- スーパー:脳の活性化と社会参加を両立できる仕事
- ホテル清掃:体を動かしチームで働くやりがいのある職場
まとめ
シルバー世代の採用は、本人だけにアプローチするよりも、家族の視点を取り入れることで結果が大きく変わります。
「健康維持」「認知症予防」「社会的交流」「経済的自立」の4つの価値を訴求すれば、本人も家族も納得して前向きに応募につながるのです。